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2012.01.26

憲法の研修「一人一票の実現!」その3

講義は、今回の研修の核心である「1票の格差」の問題に入ります!

熱い口調で、伊藤真先生は続けます。

国民の多数が、国民のための政策を実現すべきと考えても、現実に政策を議論する国会議員の過半数が少数の国民に選ばれている現状においては、国民の多数意思を反映した政策を実現することはできない。

問題の所在は、「1票の格差」すなわち、選挙権の重さが選挙区によって違うことにあります。

憲法は選挙権について一人一票を保障しています。ところが実際は、選挙権の重さが、地域によっては2倍以上の違いがあるのです。

例えば、2010年7月11日に実施された参議院選挙を例にみますと、参議院議員1人あたりの有権者が24万人の鳥取県選挙区と、120万人の神奈川県選挙区では、議員1人あたりの有権者数に5倍の格差があります。

すなわち、一人一票が保障されている鳥取県の有権者に比べて、神奈川県の有権者は1人0.2票しか保障されていない=投票の価値が1/5しかないと言うのです!

鳥取県の人を1票とすると、東京都の人は0.23票、埼玉県の人は0.25票、千葉県の人は0.29票、、、と都道府県ごとのデータが示されます。

1票の格差については、これまで他人事のように思っていたのですが、自分の住んでいる東京にあっては0.23票しかないというデータを目の当たりにすると、改めてショックでした。。。(→コチラから投票の価値を検索できます!)

続けて説明がなされます。

各地の有権者の選挙権が1票の価値を保障されていないことの不当性と、投票価値の不平等により、2011年7月11日の参議院議員選挙においては、選挙区選出の参議院議員146人の過半数74人が全登録有権者の33%によって選出されているのです。

すなわち、国民の少数によって国会議員の多数が選出されているのです。これでは憲法の要請である「正当な選挙」(民主主義の根幹である多数決)とは言えません!

1票の格差を是正することは地方の切り捨てではないかと誤解されることがあるのですが、今回の参議院選挙では、人口密度最小の北海道民の選挙権は0.21の価値しかありません。ことからも、この格差は過疎地対策とは無縁であることがわかります。

説明が続けられます。

衆議院議員選挙においては「1人別枠方式」という仕組みが取り入れられています。これは、議員定数300のうち、まず47を各都道府県に割り振り、残りを人口に比例して振り分ける方式です。結果的に人口の少ない県は多めに配分される選挙制度です。

憲法の保障する法の下の平等の意味が、違いに応じて別扱いを認める相対的平等だとすると、選挙においても「地方は地方なりの配慮が必要だ」、「地方は弱い立場にあるのだから都市住民との投票価値に差をつけた方が実質的に平等だ」という考えも出てきます。

また、「参議院議員選挙では、衆議院と違って人口比例的要素よりも地域代表的性格を重視すべきだ」という考えも、同様の発想から出てくると言えます。

地方の声を国の政治に反映させることは確かに大事なことです。
しかしそれは、都市の住民の選挙権を0.2票に押さえるようなやり方で実現すべきことではありません。選挙制度を中心とする民主政の過程はあくまで中立的であるべきです!

伊藤真先生は熱っぽく語ります。

次回は、具体的な一人一票の実現方法についてです。

憲法の研修「一人一票の実現!」その4

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