2012.01.27

憲法の研修「一人一票の実現!」その4

憲法の研修の続き、一人一票の実現方法です。

日本の法律も、最高裁判所の判例も、選挙で一人前に扱われない人がいてもそれでいいと考えている。これはきわめて正義に反すると、伊藤真先生は言います。

そして、一人一票の実現方法として登場するのが「国民審査権」です。

国民審査とは、最高裁判所裁判官を罷免するかどうかを国民が審査する制度です。

衆議院議員総選挙の投票と同時に行われるもので、審査対象となる裁判官の氏名がずらりと並んだ投票用紙に、罷免したいと思う裁判官の氏名の上に×印を書き入れる、あの制度を使おうと言うのです!

ステップとしては、

①一人一票に賛成でない裁判官が誰かを知り(→切り抜き「国民審査」でわかります!)
②国民審査権を使って投票数の過半数の×をつけて一人一票に賛成でない裁判官を罷免する
③「一人一票でないから違憲」という明確な違憲判決を勝ち取る

そうして初めて国民の手で民主主義を手にすることができる、投票数の過半数の×は十分可能と、伊藤真先生は言います。

さらに、その周知のために「一人一票実現国民会議」という組織を発足されたそうです。

一人一票実現国民会議のアンケートに答えて、サポーターになってください。皆さんの参加によってこの不正義を改めることによって民主主義を実現し、この国の憲法現実を変えることができますと、先生は言います。

そう、研修の最初に配られた「一人一票実現国民会議」というカードはこのことだったのですね。

 ひとり一人がその個性を尊重され、お互いの違いを認め合って共に生きることができる社会、世界中で子どもたちが、安全で平和の中で自分らしく生きていくことができる社会、そういう憲法がめざす社会へしていきましょう。そう言って講義は結ばれます。

ソフトで滑らかな語り口の中にも、一人一票の実現、憲法の要請である「正当な選挙」の実現を熱く語る伊藤真氏に、カリスマ講師の人気の由縁を垣間見たのでした。

学生時代に憲法を学び選挙権の大切さを学んだ(と思っていた)自分でしたが(><;)、1票の格差の問題の重大さに改めて気づかされる意義深い研修でした!

「一人一票実現国民会議」のHP(ちなみに、キャラクターの動物は、ネコでもトラでもなく、「ヒョウ」なのだそうです!)
http://www.ippyo.org/index.html

2012.01.26

憲法の研修「一人一票の実現!」その3

講義は、今回の研修の核心である「1票の格差」の問題に入ります!

熱い口調で、伊藤真先生は続けます。

国民の多数が、国民のための政策を実現すべきと考えても、現実に政策を議論する国会議員の過半数が少数の国民に選ばれている現状においては、国民の多数意思を反映した政策を実現することはできない。

問題の所在は、「1票の格差」すなわち、選挙権の重さが選挙区によって違うことにあります。

憲法は選挙権について一人一票を保障しています。ところが実際は、選挙権の重さが、地域によっては2倍以上の違いがあるのです。

例えば、2010年7月11日に実施された参議院選挙を例にみますと、参議院議員1人あたりの有権者が24万人の鳥取県選挙区と、120万人の神奈川県選挙区では、議員1人あたりの有権者数に5倍の格差があります。

すなわち、一人一票が保障されている鳥取県の有権者に比べて、神奈川県の有権者は1人0.2票しか保障されていない=投票の価値が1/5しかないと言うのです!

鳥取県の人を1票とすると、東京都の人は0.23票、埼玉県の人は0.25票、千葉県の人は0.29票、、、と都道府県ごとのデータが示されます。

1票の格差については、これまで他人事のように思っていたのですが、自分の住んでいる東京にあっては0.23票しかないというデータを目の当たりにすると、改めてショックでした。。。(→コチラから投票の価値を検索できます!)

続けて説明がなされます。

各地の有権者の選挙権が1票の価値を保障されていないことの不当性と、投票価値の不平等により、2011年7月11日の参議院議員選挙においては、選挙区選出の参議院議員146人の過半数74人が全登録有権者の33%によって選出されているのです。

すなわち、国民の少数によって国会議員の多数が選出されているのです。これでは憲法の要請である「正当な選挙」(民主主義の根幹である多数決)とは言えません!

1票の格差を是正することは地方の切り捨てではないかと誤解されることがあるのですが、今回の参議院選挙では、人口密度最小の北海道民の選挙権は0.21の価値しかありません。ことからも、この格差は過疎地対策とは無縁であることがわかります。

説明が続けられます。

衆議院議員選挙においては「1人別枠方式」という仕組みが取り入れられています。これは、議員定数300のうち、まず47を各都道府県に割り振り、残りを人口に比例して振り分ける方式です。結果的に人口の少ない県は多めに配分される選挙制度です。

憲法の保障する法の下の平等の意味が、違いに応じて別扱いを認める相対的平等だとすると、選挙においても「地方は地方なりの配慮が必要だ」、「地方は弱い立場にあるのだから都市住民との投票価値に差をつけた方が実質的に平等だ」という考えも出てきます。

また、「参議院議員選挙では、衆議院と違って人口比例的要素よりも地域代表的性格を重視すべきだ」という考えも、同様の発想から出てくると言えます。

地方の声を国の政治に反映させることは確かに大事なことです。
しかしそれは、都市の住民の選挙権を0.2票に押さえるようなやり方で実現すべきことではありません。選挙制度を中心とする民主政の過程はあくまで中立的であるべきです!

伊藤真先生は熱っぽく語ります。

次回は、具体的な一人一票の実現方法についてです。

憲法の研修「一人一票の実現!」その4

2012.01.25

憲法の研修「一人一票の実現!」その2

「憲法的視点で考える司法書士業務」の研修についての続きです。
講師は、伊藤塾の塾長の伊藤真先生です!

始めに、いまがどういう時代かについてが語られます。
貧困と格差の急速な拡大、生活保護受給世帯の増加、ワーキングプア・自殺者数・飢餓者数の増加など、現代日本の問題が挙げられます。

そして、2011年3月11日の東日本大震災について、東北地方から関東地方を襲ったマグニチュード9.0の巨大地震、津波、福島第一原発の事故と風評被害が取り上げられます。

復興のあるべき方向性は、財界のための復興ではなく、憲法の保障する人間中心の復興であるべきと、伊藤真先生は語ります。

そもそも、法律はなぜ正しいかということについてです。
法律はなぜ正しいかというと、その地域や時代の多数の人の意見(多数決)に従っているからです。これが民主主義の原則です。
では、多数意見は常に正しいのか?答えはNOです。人間は間違いを犯すことがあるからです。

そこで、憲法の必要性です。多数意見が常に正しいわけではない、多数意見でも奪えない価値を守る、それを守るのが憲法と伊藤真先生は語ります。

次に、法律と憲法の違いについてです。

法律は、国民の自由を制限して、社会の秩序を維持するためのもの
(国民に対する歯止め)
憲法は、国家権力を制限して、国民の人権を保障するためのもの
(国家に対する歯止め)

すなわち、憲法とは、
国家権力(多数派・強者)を制限して、国民(少数派・弱者)の権利・自由を
守る法(強者の弱者への理不尽を許さない)との説明がなされます。

ここで、日本国憲法の根本価値についてです。
憲法の前文には、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という日本国憲法の三大原則が示されています。

この中で最も大切なのが、基本的人権の尊重です。
憲法第13条前段には「すべて国民は個人として尊重される」と規定されています。この第13条前段(個人の尊厳)の規定が、憲法が「基本的人権の尊重」を理念とすることの根拠条文の1つとなっています。

この後、人権とは何か、自己決定権、手続的正義、平和主義についてもスライドの映像を交えながら説明がされます。

次回は、今回の研修の核心である「1票の格差」の問題についてです。

憲法の研修「一人一票の実現!」その3

2012.01.24

憲法の研修「一人一票の実現!」その1

今日は、司法書士の研修についてです。

司法書士法第25条には、その資質向上のため研修を受けてその資質向上の努力義務がある旨が定められています。それを受けて、各司法書士会や各支部が主催して様々な研修が行われます。

昨年11月に憲法の研修に参加しました。渋谷のフォーラムエイトで行われたその研修についてご紹介したいと思います。

研修のテーマは「憲法的視点で考える司法書士業務」、講師は伊藤真先生です。

伊藤真先生といえば、法学部出身者ならば一度はその名を聞いたことがあるでしょう、言わずと知れた伊藤塾の人気講師で、特に憲法の講義に定評があります。その日は、伊藤真先生の講義聞きたさにフォーラムエイトへ荒木と足を運んだのでした。

会社法や税金関係の研修は大きな会場で行われることが多く参加者も一杯になるのですが、憲法は業務内容に直接関係してこないためか参加者はそれ程多くはありません。

受付を済ませて教室に入ると、伊藤先生のサポーター(?)と思われる方が待ち構えていて、名刺大の黄色のカードを手渡されます。カードには「一人一票実現国民会議」と書かれています。
???と思っているところに、伊藤先生の登場です。

ソフトな口調でスライドを交えながら滑らかに話し出します。
ダブルのスーツが大柄な体系に似合っていて、カリスマ講師のオーラが漂っています。

司法書士が憲法を学ぶことの意味、司法書士実務における憲法と講義が始まります。出だしは、憲法入門講座といった内容です。

途中で、話しているうちに熱くなってきたのでしょうか、伊藤真先生はちょっといいですか?と言って、ペットボトルの水を飲むとスーツのジャケットを脱ぎ出しました。

スーツのジャケットを脱ぐと現れたのは、白い襟のクレリックシャツとダークな色のサスペンダー。

「なんでサスペンダーなの?」と思わず隣の席の荒木に聞くと、「知らないよ」と笑っていました。サスペンダー、あまり見ないですよね。どことなく育ちがよさそうでシビれます。余談でした(笑)。

とこのように始まった研修、次回は内容をご紹介したいと思います^^

憲法の研修「一人一票の実現!」その2